過去ログ - 唯「あずにゃんが横浜のドラフト1位!?」憂「クライマックス!」
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]
2011/07/27(水) 13:12:49.42 ID:B52d7inW0
次の日の朝、雪はほとんど融けてしまい、土や葉の上にかすかに残っているだけだった。
朝食をとりながら、いちごは今日どうすべきかを考えた。
公園に行くべきか、行かざるべきか。
あの子は自分をどう思っただろうか。
大切なグローブを馬鹿にした、嫌な奴と思っただろうか。
なんだか嫌な考えばかり浮かんだ。
しかし、彼女は、また今日も寒空の下で自分を待っているかもしれない。
そうだとすれば、いかない理由なんて一つも無い。
あの子が自分を待ってくれている可能性が少しでもある限り、それに応える義務がある。
雪でびしゃびしゃになった公園には、昨日以上に人気がなかった。
グローブを隠してある場所、いつもあの子と待ち合わせる場所に目を移すと、
女の子ではなく、一人の大人の女性が佇んでいる。
細身の体にくたびれた衣服をまとわせ、大きな瞳でこちらをじっと見据えている。
見たことのない人物だったが、いちごにはその女性が、あの子の母親であることはすぐに分かった。
ぺこり、と礼をすると、女性も礼を返す。
どちらかが名乗るということもなく、自然に話は始まった。
「…いつもあの子と遊んで下さったようで、本当にありがとうございます」
女性は再び深く頭を下げた。
「私は何も…」
「いえ、よくあの子の相手をして下さる方がいらっしゃることは存じ上げておりました。
でもそれがまさか、テレビで見るような方とは昨日まで思いもしませんでしたが…」
「…昨日は…」
「ええ。帰ってみるとあの子の目が赤く泣き腫らしておりまして、どうしたと尋ねたら、
少しずつですが話してくれました。…恥ずかしいことを知られてしまったようですね」
女性の目はまっすぐいちごを見た。
そこには気品と、みなぎれんばかりの強さが湛えられている。
顔に刻まれた深いしわが物語る苦労も、その目の力で悲壮さを感じさせなかった。
だが、その目に負けてはいけない。いちごは、気になっていたことをぶつけた。
「あの子のお父様は…?」
女性は鼻から深く息を吸って、
「ええ。予想はおつきかと存じ上げますが、娘の父、つまり夫とは別れ、別居しております。
毎日のように遊びまわりギャンブルに狂う夫に、私は困憊し離婚届を突きつけました。」
女性は一呼吸おいて、
「揉めなかったと言えば嘘になりますが、夫も家庭を困らせている自覚があったのでしょう。
いつの間にか、私に置き手紙といくらかのお金を残して家から姿を消しておりました。
その金額はさしたる額ではありませんでしたが、彼にとっては精一杯の額だったと思います」
「そのことは娘さんは知らないんですよね」
「ええ。娘には夫婦のゴタゴタを見せぬようにしておりましたし、
娘からすれば急に夫がいなくなったように思えたかもしれません」
「…旦那さんはどこへ」
「存じ上げません」
「えっ」
「夫は唐突に姿を消しました。彼が今、どこにいるのかは私には分かりません。
彼のことを思い出すと苦労ばかり思い出してしまい、彼に関するものはみな捨ててしまいましたし…」
いちごは空を見上げ、重たい息を吐きだした。
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