過去ログ - 一夏「ヒステリアモード?」
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)
2011/07/27(水) 21:44:52.18 ID:CkxjoOMAO
 廊下で山田先生とすれ違った時に感じる桃のような甘い匂い。普段よりもよりいっそう強く感じるそれを、俺は今鼻一杯に吸い込んでいる。
 今現在俺の視界を埋めつくすなにかやわらかなもの。
 その正体が山田先生の豊かすぎる胸だと気づくのと同時、自分が山田先生に抱き締められているということに俺は気づいてしまっていた。

「―――これ、は」

 次の瞬間、心臓よりさらに奥深くの深淵から――強い、脈動を感じ取った。

 熱が、収束する。
 身体中を流れる血流が身体の真芯、胸元に集まり火を宿すような感覚を覚える。両手も両足も体温を感じず感覚が覚束ないが、痛覚を感じないという以上都合がいいといえるだろう。

「……どうですか織斑君、人生初のヒステリアモードの感想は」

「――よく、わかりましたね。俺がヒステリアモードになっていることも。俺がヒステリアモードになりたがっていたことも」
 『ヒステリアモードになると身体能力が30倍にまで向上する』
 それはどうやら、思考力に及ぶようだった。
 頭が冴えるどころじゃない。
 加速された脳の血流に氷塊が混ざったような感覚。
 白熱する肉体とは裏腹に、頭はどこまでも冷めきっていく。

「ええ。私が織斑君の立場でも同じことを考えたと思いますよ。だからこれは私からの餞別です。オルコットさんを倒しちゃってください」

 よくよく考えたらひいきがバレたら大変なことになるんじゃないかと思ったが、その辺は先生自身がどうにかするだろう。今はただ、その手助けが素直にありがたい。
 いたずらを成功させた子供のような笑みを浮かべながら山田先生が緩く握った拳を向けてくる。

「わかりました。期待してください」

 俺は先生の作った握り拳に自分の拳を合わせ――

「先生が思ってる、期待以上のものを見せてあげますよ」

 白式に乗り込み、セシリアが待つ空に飛び上がった。


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