375: ◆DAbxBtgEsc[sage]
2011/08/24(水) 17:24:30.31 ID:VIc86ugYo
「……はァ?」
「だってそうでしょう、年頃の乙女がこんなに近くに居ると言うのに、
一方通行はミサカを無視して幼女と年増の元に行くと言うのですから」
「……」
「何も言わない、と言う事は図星なんですね?
ストライクゾーンは真ん中ではなく、本来はボールのはずの所を
ドーナツ状に囲んだところがストライクなんですよね?
と、ミサカは一方通行がどんな趣味をしていても大丈夫ですと女神の様な微笑みを浮かべます」
「……」
一方通行は何も言わない。と言うか、9982号の背後を見ていた。
そこには、
「年増、年増年増、とりま年増……」
何やら負のオーラを発散させながらブツブツと念仏を唱えるかのように年増と連呼している芳川桔梗が。
その後ろでは状況を飲み込めずポカンとしている打ち止めがいるが、
9982号にとって今はそちらはどうでもいい。
「あ、あの……芳川、さん?」
思わずさん付けで9982号は尋ねるが、芳川の耳には入っていないようだった。
「成程……成程ね……命を散らす場所はここで良い、と言うことね?
大丈夫、毎年この日この場所に花束を添えてあげるから」
「ちょっと待っ―――」
9982号の弁明を待たずして、芳川は動き出した。
研究者のくせにいつそんなに鍛えたのかと言う程の俊敏な動きで9982号へと急襲し、
9982号は意識的ではなく反射的にバックステップをして何とか避ける事が出来た。
しかしあの場に居たらもれなく潰されていたに違いない。
それを感じさせるほどの威圧を芳川は放っており、思わず冷や汗が頬を伝う。
そして、9982号の汗が、顎から地面に零れ落ちた瞬間。
「ッ〜〜!!」
2人は声も無く駆けだした。
しかし、駆ける方向は、2人とも同じ方向。
それはすなわち、9982号の逃走と、芳川の追跡の開始だった。
そうして取り残された打ち止めと一方通行は、
「ねえねえ、お腹すいた!ってミサカはミサカは甘えてみたり!」
「……そォだな、ファミレスでも行くかァ」
何事も無かったかのように晩御飯を食べる事に決める。
空を彩っていた夕焼けは、徐々に雲による陰りを増し、
地上を染めていたオレンジは徐々に灰色と化して来ていた。
雨が、降りそうだ。
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