71: ◆DAbxBtgEsc[saga]
2011/07/31(日) 21:19:39.11 ID:KC1gFRQvo
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神裂火織はビルの屋上に佇んでいる。
辺りは暗闇に包まれ、人の気配を感じさせない程静寂であった。
目線の先、そこには建設段階のオルソラ教会があるのだが、
その教会も例外ではなく、無音。
優しく吹き抜ける風だけが、ビルの周りを彩る。
常人なら、風の音だけを耳に捉えていただろう。
しかし、『聖人』たる神裂の聴力は、かなりの距離を保ったオルソラ教会の中から発せられる声を聞き漏らさず、
神裂はただただ会話に耳を傾けていた。
天草式がオルソラ=アクィナスを誘拐したと言われるこの事件。
神裂火織は天草式を擁護する為でも、それに敵対するローマ正教を斬る為でも無い。
ただ、全ての結末を見届けたかっただけだった。
天草式が『変わってしまった』のだとしても、ローマ正教の『裏のやり方』に嵌められただけだとしても、手出しをするつもりはない。
彼女は、既に『元』女教皇であり、イギリス清教所属の人間なのだから。
だが、その心は天草式に、「今も昔も変わらずにいて欲しかった」と言うもので会ったのだが。
それ故に神裂は、心底安堵した。
天草式は、今も変わらず理不尽な暴力を受ける人間に、手を差し伸べるべく動いていたのだから。
ただ、ローマ正教の『裏のやり方』で虐げられそうになったオルソラに、手を差し伸べただけなのだから。
その真意を確認して、神裂は昔を懐かしむように、眼を細める。
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