過去ログ - ひたぎ「これも、また、戯言よね」
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31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:18:30.67 ID:ooW4dNWwo
「おもし蟹」
ひたぎちゃんの事情を、順序だてて説明したところで、忍野は「成程ねえ」と頷いた後、
しばらく天井を見上げてから、ふと思いついたような響きで、そう言った。
「おもしかに?」
ひたぎちゃんが訊き返した。
「九州の山間あたりでの民間伝承だよ。地域によっておもし蟹だったり、重いし蟹、重石
蟹、それに、おもいし神ってのもあるな。この場合は、蟹と神がかかっているってわけだ。
細部は色々ばらついているけど、共通しているのは、人から重みを失わせる――ってとこ
ろだね。行き遭ってしまうと――下手な行き遭い方をしてしまうと、その人間は、存在
感が希薄になるそうだ」
「………存在感……」
「存在感どころか、存在が消えちまうって、物騒な例もあるけれどね。似たような名前じ
ゃ中部辺りに重石石ってのもあるけど、ありゃ全くの別系統だろう。あっちは石で、こっ
ちは蟹だし」
「蟹って――本当に蟹なんですか?」
「馬鹿だなあ、阿良々木くん。宮崎やら大分やらの山間で、そうそう蟹が取れるわけない
だろう。単なる説話だよ。ちょっとばかし異国に居ただけで、もう忘れちまったのかい?」
なぜ、日本を離れたことを知っているのか。今更そんなことは気にしない。こいつなら、
読心術くらい、朝飯前なのだろう。
「そこに居ないほうが話題になりやすいってこともある。妄想や陰口のほうが盛り上がっ
たりするもんだろう?」
「そもそも蟹って、日本のものなんですか?」
「阿良々木くんが言っているのはアメリカザリガニのことじゃないのかい?日本昔話を知
らないのかな。猿蟹合戦とか。」
「知らない」とは、なんとなく言いづらい。
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