過去ログ - ひたぎ「これも、また、戯言よね」
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 09:35:12.56 ID:ooW4dNWwo
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幸福が不幸に変わることはあるが、不幸は幸福には変わらない
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戦場ヶ原ひたぎはクラスにおいていわゆる病弱な女の子という立ち位置に与えられてい
る――当然のように体育の授業なんかには参加しないし、全校集会でさえ、貧血対策とや
らで、一人だけ日陰で受けている。ひたぎちゃんとは、あの大統合全一学研究所を退学さ
せられて、とりあえず高校に行っとくかということで編入してから同じクラスなのだがおそ
らく一度も口を利いたことはない。
まぁ彼女は友達を作らないタイプなのだから仕方ないのだろう――僕と違って――作れ
はするのだろう――僕の個人的な戯言はおいといてひたぎちゃんの話題に戻ろう。戦場ヶ原
ひたぎ、名前こそ恐ろしい彼女だが特に悪い噂は聞いたことがない。
成績はトップクラス。
戻って1ヶ月で英語を忘れてしまった僕とは違い優等生である。
体は弱いが、おそらく普通に幸せに生きているのだろう。僕のような社会不適合者とは
違い、普通に卒業し、普通に生活し、普通に人生を終えるのだろう。と、またもや勝手な
考えでそう思っていた。僕の周りに普通の人間などいるわけがないのに―――――――
僕にとって地獄のようだった春休みの冗談が終わり、僕にとって悪夢のようだったゴー
ルデンウィークの絵空事が明けたばかりの、五月八日のことだった。
例によって遅刻気味に、僕が校舎の階段を駆け上っていると、丁度踊り場のところで、
空から女の子が降ってきた。ひたぎちゃんが降ってきた。
正確に言うなら、別に空から降ってきたわけではなく、階段を踏み外したひたぎちゃん
が後ろ向きに倒れてきただけのことだったのだけれど――避けることもできたが、僕はと
っさにひたぎちゃんを受け止めてしまった。
避けるよりは正しい判断だっただろう。
いや、間違っていたかもしれない。
何故なら僕が受け止めたひたぎちゃんの身体は、とてつもなく軽かったからだ。
戦場ヶ原ひたぎには体重がなかった。
ここにいないかのように。
存在していないかのように。
ここにいるべきでないように。
まるでこの僕のように。
いてもいなくてもよいかのように。
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