16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/03(水) 02:27:06.43 ID:UwF03LhUo
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耳を突く、蝉時雨。
激しく降る雨音のように絶え間なく流れ込んでくるその鳴き声が、
空っぽになったこの身体をいっぱいに満たしてしまいそうな気にさえなる。
喉が乾いた。
見慣れた自室の天井を仰ぎ見たまま、こくり、と喉を鳴らして唾液を飲み込む。
額にぷつりと浮いた汗が、つう、と眉間から頬を滑って白いシーツに落ちる。
こんな時でも喉は乾くんだ。当たり前のことが悲しくて、視界がじわりと歪む。
こんな時でも私の身体は水分を欲して、まるでもっと泣けとでも言われているみたいだ。
ふ、とあの子の笑顔を思い出した途端、胃がぐるりと反転したような不快感に襲われた。
背中を丸めてシーツを噛み締め、せり上がってくる吐き気をこらえる。
「……ッ、うぅ……ッ」
脂汗と涙が混ざり合ってこめかみを伝い、シーツにぱたぱたと染みを作った。
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