過去ログ - エリー「私と5つの物語……///」
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62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/05(金) 21:39:46.72 ID:rkRztRK1o
かすかな雨がふりはじめました。

梅雨のなごりのような、別れを惜しんで涙をながすような、そんなしずかな雨です。

白糸のような雨をながめつつ、私は本の一節をくちずさみます。

エリー「……イル・プルール・ダン・モン・クール、コーム・イル・プル・スュール・ラ・ヴィル……」

庭にいたネロは何処かへ行ったのでしょう、姿が見えません。

彼女もこの雨を見ているのでしょうか。

部屋の中は私とコーデリアさんのふたりだけ。

雨の音だけが部屋を満たしています。

ふと私は、机に向かって書き物をしているコーデリアさんの背中に声をかけます。

エリー「あの……コーデリアさん」

コーデリア「なぁにー?」

コーデリアさんはゆっくりとふりむき、やわらかくほほえみました。

しなやかにブロンドの髪が流れます。

エリー「恋って……どんなかんじなんでしょう?」

コーデリア「んー……恋、ねえ……」

コーデリアさんは間延びした声でそういうとぼんやり窓の外を眺めました。

霧のような、ささやかな白い雨です。

コーデリア「どきどき、かしら?」

思いついたように私に向きなおってそう言うと、楽しそうに微笑みます。

エリー「どきどき……ですか」

コーデリア「そうよ。どきどき、よ」

ささやくような雨音が聞こえます。

エリー「それって……どんな、どきどきなんですか?」

コーデリア「そうねぇー」

コーデリアさんは幼い子供のような、いたずらっぽい笑顔をみせました。

コーデリア「とってもうれしいどきどきと、どうしようもなく泣きたいような、そんなどきどき」

コーデリアさんが楽しげに言ったので、つい私もつられて微笑みます。

エリー「どっち、ですか」

でも、私はその答えを、なんとなくですが知っている気がしたのでした。

コーデリア「どっちもよ。喜びも悲しみもみんな恋。仕方ないわよ、好きなんだから。でも、好きだからそういうのがみんな幸せなのよ」

エリー「好きだから、幸せ……」

その瞬間、私の胸に総てが、ネロの肌の感触、声のつや、きれいな横顔、手の温もり、やさしい笑顔、総てが蘇るのでした。

そして、いとしさが、その総てを包み込むいとしさが心の奥から熱いほどのあたたかさで湧き出てくるのです。

この泣きそうになるくらいのきもちを確かなものとして、いま私の中に感じました。

そうだ、これがそのきもちなんだ……。

コーデリア「好きなら好きって、言わなくちゃ」

座っている私の足下にほのかな光が射しました。

雨はあがっていたのです。

コーデリア「だって、恋……してるんでしょ?」

エリー「はい!」


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