過去ログ - アレイスター「鋼盾掬彦、か……まったく、たいしたイレギュラーだよ」
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397: ◆FzAyW.Rdbg[saga]
2011/09/18(日) 12:35:18.03 ID:R2bQss6To



「お仕事に、戻られるんですか?」

「ああ、もう戻るよ
 そうそう、君にこれを渡しておこうと思ってね」


 そう言って彼女は胸ポケットから革製のケースを取り出した。

 そこから一枚カードを引き出すと、高級そうな万年筆をさらさらと走らせる。


 名刺、というヤツだろう、学生である鋼盾には馴染みのない、大人のアイテムだ。

 ぞんざいに手渡されたその紙片を鋼盾はまじまじと見つめる、4号サイズの個人情報。

 色気のない明朝体で研究所の名前と住所、電話番号、メールアドレス、走り書きの携帯番号、そして


「…ああ、迂闊だったな、そういえばまだ名乗っていなかったね。
 それにある通り私は木山だ、木山春生という。先程も言ったが大脳生理学者で、専門はAIM拡散力場だよ」


 大脳生理学者、木山春生

 それが白衣の彼女の名前だった


「ありがとうございます。
 ぼくは鋼盾掬彦、鋼の盾と書いて、鋼盾です。
 ……さっきの彼は、青髪ピアスとでも呼んであげてください」


 当然ながら名刺の持ち合わせなどない鋼盾は、生徒手帳を取り出して木山にそれを見せる。

 学生にとっての身分証明書といえばこれだろう、名前と学校名に学校印、住所や血液型、そして本人の写真。

 詰襟姿の気弱そうな、覇気のない少年が死人のような目をカメラに向けている……撮影したのは4月、まだ絶望の中にいた頃のものだ。

 鋼盾にとってはあまり人目に晒したくないそれを、木山は懐かしそうに眺めている、なるほど大人になれば目にする機会もないものだろう。





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