8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/10(水) 04:15:45.07 ID:aUDTZZ1DO
隣の姉はよく柿食う姉だなら書いてきた
「雨、凄いね」
「うん。風も凄い」
窓の外はバケツをひっくり返したかのような雨と、小さな子供なら簡単に吹き飛ばされてしまうくらいの風が吹き荒れている。
天気予報の話によると今年一番の台風らしい。テレビでは台風情報をひっきりなしに流している。
「あー、ひま。ひまひまひま」
せっかくの日曜日なのに台風が直撃して出掛けることが出来なくなった姉は、呪文のようにうわごとを繰り返している。
日曜日が台無しになったのは弟である僕も同じなのだが、元々予定のあった姉にはダメージが大きいようだ。
「お腹空いた」
「え? さっきアイス食べたじゃん」
「あんなのお腹に溜まるわけないじゃん」
確かにその通りかもしれない。けどアイスを食べたあとにお腹空いたは違う気がする。
「あ、冷蔵庫にあれあったでしょ。あれ」
「あれってなにさ」
「あのあれだよ……果物!」
結局答えを聞けなかった僕は、渋々冷蔵庫を開けてあれが指す果物を探してみることにした。
適当にものを避けるとレジ袋に入った沢山の柿が見付かった。
「あれって、柿のこと?」
「そう、それ!」
柿くらいはちゃんと覚えていてほしいものだ。
「200円あげるから剥いて持ってきてー」
自分でやれと言いたいところではあるが、ただ皮を剥くだけで200円はおいしいので結局姉の言いなりになる。
柿を剥きながらふと思う。
それにしてもなんでこんなに柿があるのだろうかと。季節ものとは違う気がする。
おそらく母さんが安かったとかいうノリで買ったのだろう。
「うわぉ、美味しそう」
待ちきれなくなったのか、いつの間にか台所に来ていた姉が僕の隣で目を輝かせている。
「どのくらい食べる?」
「いっふぁい」
「あ、つまみ食いすんなよ」
「んー?」
姉は食べるのを止めようとしない。僕が剥いたそばから柿に手を付けている。
隣の芝は青い、とはよく言ったものだ。実際、姉が美味しそうに柿を食べていると不思議と食べたくなってくる。
「ん」
そんな僕の気持ちを悟ってか口の前に柿が差し出される。
食べてみると少々季節外れではあるものの、柿はとても甘く美味しかった。
台風で予定が潰れた姉の気は晴れただろうか。隣で柿を頬張ってる姉を見て僕は笑った。
おわり
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