過去ログ - 唯「ひめゆり」
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/16(火) 00:16:51.56 ID:xA3bNg18o

その少し後ろに、憂と純ちゃんの姿がありました。


 「梓ちゃん!どいてっっ!」

 「っっっしゃぁああ!」


憂と純ちゃんが、ご飯を詰めた醤油樽のてんびん棒を担いだまま、壕の中に転がり込みます。


パパパパン!


その瞬間、機関銃の乾いた着弾音が続き、壕の入口に土ぼこりが立ちました。


 「うぉ〜危なかったぁ〜!」
 
 「純が炊事場で炊夫さんに“もっとご飯”とかゴネるから……」

 「梓ちゃん、純ちゃん、とにかく早くオニギリ作ろうよ」


三人が安堵しながらグチを言い合っています。


陸軍病院壕の周囲にも、砲爆撃が降りしきるようになり、

“飯上げ”から帰ってくる間も、砲撃で吹き飛ばされた土塊がどんどん入ってきます。


 「うわぁ、ご飯が泥だらけ……ムギちゃん、どうしよう?」

 「水も少ないし……洗えないからこのまま握るしかないわね」


泥だけならまだしも、看護活動で血や膿や糞尿の世話をした手を洗う水もなく、手をモンペでぬぐってオニギリを握りました。

近寄ってきたりっちゃんが、ご飯の入った醤油樽をのぞいてため息をつきます。


 「この量じゃ、全員に行き渡らないだろ……」

 「もっと小さくするしかないよ……」


食糧も不足し、オニギリもはじめはテニスボールくらいだったのが、ついにはピンポン球くらいになったのです。



オニギリをにぎりながら、私は独り言のように、りっちゃんに話し掛けます。


 「あれ? この壕に治療班来たの、4日前だっけ?5日前?」

 「ゴメン、私も覚えてないや……」


人手も足りず、忙しかったり、砲爆撃が激しくて交代のために外に出られなかったり、

勤務時間も、十二時間交代のはずが、二十四時間、三十六時間連続勤務にもなりました。

薬箱に座って寝られればいいほうで、立ったまま坑木に寄りかかって寝ることも多かったのです。


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