43:Until reaching the starting line ◆oEZLeorcXc[saga sage]
2011/08/21(日) 17:37:52.09 ID:rY6iS8KI0
「…………」
「…………」
赤毛の少女と白い少年は窓のないビルの一室にいた。
六畳ほどの小さな一室。
全てが終わったとしても、その後には必ずはじまるものがある。
学園都市は特定の誰かの悪意のない、平和といえる町へと姿を変えていた。
しかし、原因が絶たれたところでその後処理や影響がすぐになくなるほど学園都市は小さくない。
窓のないビルの扱いが最たる例であり、空間移動の能力者を使わなくては侵入できないこの場所に様々な機能があるのは変わらない。
それはある意味で今の学園都市の現状そのものだ。
二人がいる場所は『待合室』と呼ばれた場所。
窓のないビルの機密性が弱まり『案内人』の数は以前より増員されたとはいえ、元々が三桁にも満たない数しかいない十一次元特殊計算式応用分野、需要に比べて供給が圧倒的に少ない。
故に以前よりも出入りが激しくなった窓のないビルで『案内人』を待つ場所として用意されたのがこの場所だった。
「で、まだなの」
「俺が知るわけねェだろォが」
「貴方だけ送って戻ってくるんじゃダメなのかしら?」
「書類持ってくるから待ってろとよォ」
「……早く帰りたいんだけど」
「俺に言うンじゃねェ」
赤毛の少女と白い少年は広くない室内でその両端に座っていた。
できる限り近づきたくないとでも言うように端と端に座り、互いを見ないように顔を背けている。
会話が途切れ、何度目かの沈黙が室内を支配する。
それはお互いがお互いと話したくないから。
しかしそれ以上に。
お互いに無音の空間にいるのが嫌だった。
だから幾度となく同じような会話を繰り返していた。
中身のない、繰り返しの時間を過ごしていた。
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