7: ◆oEZLeorcXc[saga sage]
2011/08/17(水) 16:11:18.47 ID:5Lu3WJlC0
だからどうしたと言うのだろう。
学園都市に来た理由すら思い出せない人間に超能力者<レベル5>の力も地位も価値なんてない。
そんな自分はもう学園都市にいる意味はない。
かといって学園都市を出るつもりもない。出る事はできない。
行く場所などないのだから。
『目的』を失った人間はどこに行けばいいのだろう。
先ほどまでいた『グループ』の構成員だった三人が部屋を出て行って一人になってから、彼女がずっと反芻している言葉。
『グループ』は馴れ合いの組織ではない。
互いの利用価値だけが繋がりの組織だった。
それでも生き死にを共にした間柄だ、『仲間』の行く末に興味があったのだろう。
最後の時間には誰からともなく少しだけこの先の身の振り方の話をしていた。
金髪でグラサンは「大切なものを守るために、平和を維持でもやっている」と言っていた。
素顔を隠した優男は「妹分を連れて故郷にでも帰ってのんびりしたい」と笑っていた。
白く細い凶悪面は「やる事がある」とだけ忌々しそうに吐き捨てた。
私はなんと答えたか、つい先ほどの事なのに彼女自身が思い出せないでいた。
幸いにも帰るべき場所はある。
お節介で世話焼きでお人好しの同居人の部屋。
しかしそれは彼女の居場所ではない。
あくまで一時的な仮宿。
だから彼女は歩き出せないでいた。
結果、ソファの肘掛の片方に足を、片方に頭を乗せて、寝るわけでもなく横になっている。
何の『目的』もなく。
ただ時間が過ぎるのを待っていた。
時間が解決してくれるような事でないと知りながら。
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