28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga]
2011/09/06(火) 23:32:43.93 ID:FAdaM4nCo
「いや、そういうところが、なんだけど……」
辛うじて視界の端で捕らえている上条が、頬を掻いている。
「……」
美琴はもう、色々といっぱいいっぱいで言葉を返す余裕もない。
缶を持つ指が小さく震えて、前髪が僅かに漏電しているのがわかった。
プルルルル
「!?」
いきなりの携帯電話の音。
身体がベンチから浮くほど驚く。
「わっ、俺か。誰だろ」
原因は上条だった。
彼はポケットからボロボロの携帯を取り出すと、パカッ、と開いた。
ボタン操作をしているところを見ると、メールらしい。
上条が携帯を見ている隙に、深呼吸をこっそりと。
そうこうしているうちに、読み終わったらしい。上条が携帯電話をポケットに戻した。
(よ、よし……落ち着いたわ。普通に、普通にしゃべればいいのよ、御坂美琴)
いつの間にか胸に当てていた右手には未だ激しい動悸を感じるが、無理やり気のせいだと思い込む。
しかし、今こそ美琴が顔を上げようとした瞬間に、
「あ、ごめん美琴。ちょっと俺、行かなくちゃいけなくなった」
上条が立ち上がった。
「え……」
「いやー、なんか友達に呼ばれちゃってさ。土御門と青髪。ほら、お前も前に会っただろ?」
そんなことを言われても、気合一発さぁ会話! という出鼻を挫かれた美琴の耳には、うまく言葉が入ってこない。
上条はそんな美琴の沈黙を肯定と解釈したらしい。
じゃーな。体調、気をつけろよ? とあっさりと背を向け、走っていってしまった。
「あ……」
大混乱から上条さん不意の退場まで、美琴の中ではめまぐるしく変わった状況についていけず、中途半端に手をあげて見送ってしまう。
「……」
そして、そのまま、たっぷり一分。
はー、と美琴が大きくため息をついた。
寂しさと、自分を置いて言った彼への苛立ち。
「しゃべれなかった、な」
ポツリと呟く。
自分が悪いのはわかっている。
一人で盛り上がって、彼の気遣いも無視して、その結果のこったのは、八つ当たりっぽい彼への感情だ。
でも……
「……ばか」
胸からあふれそうになった切なさが、彼への罵倒となって、唇からこぼれた。
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