34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga]
2011/09/07(水) 22:52:28.42 ID:Ai3V9d6Po
指定された部屋に入って15分が経過した。
スキルアウトの溜り場として風紀委員も警戒している区域。そこにあるホテルの一室だ。
ホテル、と言ってもそう上等なところではない。いわゆる、ビジネスホテルよりは少しマシ、というところか。施設も、衛生も、普通レベルといえる。
違うのは、設えられたベッドがやけに大きなことと、壁が高機能防音性を持っていること。そして一度入ると、管理者か借主でなければドアの鍵をあけられないことだ。
よく観察しないとわからないが、そこかしこに巧妙に隠された撮影用の器具と、簡易AIMジャマー。
今は機能していない――どうもいまここを借受けて指定してきた彼はその料金までは払わなかったようだ――それらと、脱出できない部屋。何をする場所なのかは押して知るべきである。
もちろん、ジャマーが機能していない今、部屋に立つ白井には脱出など容易なことだ。
彼は当然、白井の能力を知っている。それでもないジャマーを機能させないのは、こちらが逃げないことを確信しているからだろう。
「……」
そして忌々しいことに、その確信は正しかった。
ふと、視線を動かした白井の目に、ベッドの枕元に置かれた、ラバー製の『器具』たちがとびこんできた。
「――っ!!!」
白井の背筋を、凍るような悪寒が駆け上がる。
小一時間の後には自分の身に起こるだろうことを想像してしまったせいだ。
汚される。
あの男の指で。
あの男の舌で。
そして、あの男の――
「っ!」
叫びだしそうになり、白井は両手で己が口を押さえた。
防音のこの部屋から、悲鳴は出て行かない。しかし、そうすることは彼女の矜持に反していた。
そう、自分は美琴を守る為にここにきた。
何が起こるのかは、とうに覚悟してきたはずだ。
声を飲み込む。動機を抑える。剥がれかけた決意の仮面を、改めて付け直す。
しっかりと、しっかりと、しっかりと。
白井にして、数十秒。
辛うじて平静を取り戻した彼女の背後で、
ガチャ
「!」
音がした。
96Res/65.20 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。