50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga]
2011/09/17(土) 18:58:28.34 ID:FdOf8+rJo
結局、元の公園に舞い戻った。
ふにゃふにゃ言う自分に気がつかないまま、再び「ちぇいさー」とミドルキック。
自販機もまさか一日二回もけられるとは思わなかったらしい。ヤシノミサイダーを、3本もはく羽目になった。
(きゃー! きゃー! きゃー!)
一方の美琴は、先ほどからベンチに腰掛け、雑誌を開いてはパーン! 開いてはパーン! を繰り返している。
正直怖いが、怖い人に声をかける者はそうはいない。
何より、違法行為が何もないのだ。通報することはできても、連衡するには無理がある。
その上、彼女は第3位だ。風紀委員もアンチスキルも、うかつに手は出せない。
(えっ!? そ、そこまでするの!? いいの!? これ、普通の雑誌なのに!?)
続きをめくって、美琴の顔はさらに赤くなる。
読んでいるのは、いつも立ち読みしている雑誌でも、お気に入りの漫画だ。
ツンツンした少女と、鈍感だがまっすぐな少年のドタバタラブコメディ。
そんなどこかで聞いたような、というか、思いっきり自分を重ね合わせることのできるストーリー。
先週のラストから、いよいよ主人公とヒロインが心を通わせる山場に突入するのは、美琴にもわかっていた。
しかし実際に、絵としてみると破壊力が違う。何より、自分の心持が違う。
美琴の脳裏に、漫画と連動して、妙な想像――世間様ではそれを妄想と呼ぶ――が浮かぶ。
――美琴、俺、実はさ
――な、なによ、真剣な顔して
――真剣にもなるさ。一大決心なんだからな
――な、あ、う、な、なによそれは。お金なら貸さないわよ!?
――…真剣なんだ。聞いてくれ。
――う、あ、う、うん。
――ありがとう。……美琴、実は俺、お前のことが……
(だ、だめよだめだめだめ! 私はまだ中学生なのよ!? そ、そりゃアンタは高校生かもしれないけど、そんな、こんなところで……)
妄想の中ですら、一足飛び以上に展開が飛んでいるが、恋する乙女に常識は通用しない。
イヤンイヤン、と首を振る美琴の前髪からは、バリバリと紫電が漏れまくっている。
ベンチの隣に三段重ねで置かれたヤシノミサイダーは、温度差ゆえに汗をかいていたが――美琴にあきれているようにも、見えた。
結局、彼女が正気を取り戻すためには、一時間ほど後に偶然通りがかった彼女の友人である、飾利と涙子の登場を待たねばならないのだった。
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