203: ◆goBPihY4/o[saga]
2011/08/26(金) 20:24:24.31 ID:KP4Oa+x5o
残された木原は、肩をすくめてため息をついた。
「……ったく、しょうがねえ奴。まあ、気にすんな」
「俺が何を気にするって?」
「ん? 少しは効いたかと思ったんだがな」
「今のやりとりのどこに俺を落ち込ませる要素があるっていうんだ?」
一方通行に比べて随分持ち上げられて、垣根は木原の言葉に素直に疑問を返す気になっていた。
ここへ来てすぐの時は視界にすら映っていなかった男であるにも拘わらず。
その、眼中になかったはずの入れ墨の科学者が、またしても垣根の心を大きく揺さぶる言葉を放つ。
「お前は今まで人を殺してばかりいた。救う力なんかない」
「それがどうした」
「そりゃ、あんまり名誉な評価じゃねえよな」
「別に」
今更レベル2にどう評価されようと気にもならない。
それは本当だった。
そして、今のところ自分には人を救った経験が無いという所も。
自分が他者を殺すかどうか迷った上で見逃してやった事なら多々あるが。
「俺の手は殺すためにあるんだろうさ。今になって人を救うだのなんだの、俺には勿体なすぎる仕事だ」
やはり、そこに行きつく。
助けるだとか救うだとか、そういう所謂「いいこと」をするには、自分の手は汚れ過ぎている。
善行そのものに失礼だ。
踏み入れてはいけない領分。
彼はこっち側。
ソレはあっち側。
今更どの面下げて。と、思わずにはいられない。
誰かにそう思われてしまうような気がしてならない。
それが誰なのかはよく分からないが。
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