572: ◆goBPihY4/o[saga]
2011/09/21(水) 01:40:17.32 ID:XOKLck0zo
諦めて部屋を出ようとしたその時だった。
木原のデスクの電話が鳴った。
ポポポ、と無機質な電子音を部屋中に響かせて、不在の主へ着信を告げている。
「ンだよ……内線じゃねェのか」
研究所の外からの着信を意味する緑のランプが、受話器のすぐ横で光っていた。
一方通行が木原の外部の知り合いや仕事の相手と話をしても何の意味もないのだが、
何となく鳴りやまない電話がうるさくなって、受話器を上げた。
「――もしもォし」
『! アンタ、一方通行?』
「ン? 俺が分かンのか。オマエは誰なンだよ」
『猟犬部隊の隊員よ。木原さん、そっちにいる?』
「あー、確かヴァーラ、とかだっけェ?」
『ナンシーよ。それとアンタが言ってるのは多分ヴァーラじゃなくてヴェーラよ』
ナンシー、ヴェーラというのは猟犬部隊の隊員に与えられるコードネームだ。
彼ら猟犬部隊は、リーダー含め世間様に顔向けできないような下衆な犯罪を犯して来たクズの集まりである。
大声で名乗れるような名はもうない。木原数多だけは本名だが。
よって、まともな人間だったころの名前を捨てさせられて、コードネームで呼び合うのである。
木原が独断で決めるらしい。
このナンシーも、素顔を見ればどこからどう見ても日本人だが、ナンシーである。
単純に趣味の世界だ。
ガイジンの名前の方がカッコいいのだろう。
彼は割と形から入るタイプである。
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