614:第E話―――サーシャ「とりあえず、ホームセンター行きたいです」 香焼「仕事で来たんでしょ」[saga]
2011/09/20(火) 03:43:37.91 ID:tjHrp3ic0
勝鬨から一寸後、ヘリはハバロフツクを発った。
ヘリの中は特に会話も無く、雑動も無い。ただただ機械音とローター音だけが喧しいのだ。
サーシャも元より寡黙な性格である為、この環境は丁度良かったのだが、やはり独特のプレッシャーには気押されるモノがある。
ふと、私の横に座る大尉殿が話しかけてきた。
大尉「寒くは無いか?」
サーシャ「改めて第1の解答ですが、大丈夫です。コートの御蔭で特に辛さは感じませんよ」コクッ・・・
大尉「そうか。贈った甲斐があって良かったよ」フフッ
幾らかでも和ませてくれようとしているのだろう。
大尉「後の話をするのは良くないかもしれんが、暇が出来たら連絡しろ」スッ・・・
サーシャ「え、あ……名刺、ですか」キョトン・・・
大尉「何か困った事が有れば連絡を寄越せ。尤も、魔女(ワシリーサ)程の『裏』までは扱えんがな。政治とか軍関係で困った時だ」
サーシャ「……感謝します」ペコッ
ヴァロージャさんといい、大尉といい、此処数日は良い大人に恵まれる。運が良い。
大尉殿は口調を崩したまま、話を続けた。
大尉「ま、後は長期休暇でも出来たら遊びにおいでなさい。歓迎するわ」フフフ・・・
サーシャ「遊びに、ですか? 改めて第1の質問ですが、大尉殿の部隊にという事でしょうか?」
大尉「ふふふ。違うわよ……そうね。タイのとある寂れた港街。私はそこにホテルを持ってるの」
サーシャ「ホテルですか。改めて第1の確認ですが、オーナーという意味でしょうか?」フム・・・
大尉「そんなとこね。街は無頼漢(アウトロー)と娼婦(ビッチ)とヤク中(ジャンキー)の吐き溜め見たいな場所だけど、ホテルは立派よ」
その紹介で誘うのは如何なモノだろう。
大尉「ははは。そうだな、普通の人間が来る場所じゃないさ」クスッ
サーシャ「では、その……むぅ」ポリポリ・・・
大尉「だが、今回の任務を平気な顔で乗り越えられるような肝を持ち合わせているのであれば……社会科見学という事で遊びに来い」ニヤリ・・・
世界の底辺よりも更に『下』というモノを見せてやる……と黒い笑みを浮かべ、私の戸惑う表情を大尉殿は楽しそうに観賞していた。
今まで任務で死霊に荒された街などを見てきているのだが、それよりも酷いのだろうか。
余計な好奇心と、これからの不安を抱きながら、私は鋼鉄の揺り籠の中で降り落とされる時間を待った……―――
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