61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)[sage]
2011/08/28(日) 04:53:54.46 ID:7L728IKno
  
 生まれてからずっと一戸建てに住んでいた私にとって、マンションという存在はとても新鮮なものに映った。 
  
 「うわー、想像してたより綺麗な部屋!」 
  
 「どんな想像してたのよ」 
  
 「もっとぐちゃぐちゃかと」 
  
 背負っていたギターケースを適当に置いて、さわちゃんの部屋を物色する。 
 キッチンには色んな調理器具があって、リビングには普通の雑誌が置いてあって、ベランダには洗濯物が干されてある。 
 何か、本当に普通の部屋で拍子抜けしてしまった。 
  
 「それじゃ、早速練習するわよ」 
  
 「え、何の練習?」 
  
 「ギターと歌に決まってるじゃない。もう、しっかりして!」 
  
 それから無理矢理にギー太を担がされて、特訓が始まった。 
  
  
 ―――――――――― 
 【9月22日】 
 ―――――――――― 
  
  
 特訓を初めてから十日あまり経った。 
 結構上達したかも、なんて浮かれているとさわちゃんに見透かされてたり。 
  
 「……んー、ここはこうだっけ」 
  
 「違う、こうよ」 
  
 さわちゃんは口頭で指導するだけじゃなく、自らギターを弾いて教えてくれたりもしている。 
 そう、ただ純粋に私にギターを教えてくれている。 
  
 それだけ、なのに。 
  
 「……ほー」 
  
 「……唯ちゃん?聞いてた?」 
  
 「え?」 
  
 細い弦を弾く指先と、穏やかな表情でコードを抑えるその顔にいつの間にか見惚れてしまっていた。 
 私はギターの音色を聞くんじゃなくて、ずっとさわちゃんを見ていた。 
  
 「ちょっと、ぼうっとしないでよ」 
  
 「あ、ごめんなさい」 
  
 最近、少し自分が変な気がする。 
 さわちゃんのことを尊敬しているのは確かだし、やっぱり自分よりもずっとずっとギターが上手な人だから、なのかな。 
  
 それだけ、だと思いたい。 
  
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