過去ログ - 男「だったら俺が悪いのかよ!」
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114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/05(月) 01:04:48.15 ID:wbDVTs5Go

                   ◆

 待合室に戻る。風邪が治ってからは、思考が妙な方向に流れ出すことはなくなった。
 彼はそのことを不思議に思わなかった。たぶん、それは当然のことなのだ。

 彼は今までどうでもいいことで悩みすぎた。根拠のない劣等感に悩まされていた。
 でも本来はそんなことはどうでもいいことなのだ。苦悩は常に自己陶酔でしかない。

 妙に晴れ晴れとした気持ちで、彼は長椅子に座る。窓の外から赤い西日が差し込んでいる。
 足音に気付いて顔をあげると、ムラサキがいた。

「……隣、いい?」

 多少怪訝に思いながらも彼は頷いた。隣に座ってからというもの、ムラサキは何をするでもなくただ落ち着かなさそうにしていた。

 彼女はしばらく押し黙っていた。彼は何も言えなかった。結局、沈黙が横たえる。
 こういうことだ、つまり。何がどうなるかは誰にも分からない。次に何があるかも誰にも分からない。
 ただ刻一刻と変化は続いていく。何かが変わり続けるのだ。

 ムラサキが隣のやってくるように。
 そうしてすぐにいなくなるように。
 
 彼女がふと顔をあげた。それまで何かを思いつめたような表情をしていたにも関わらず、彼女の表情に深刻そうな色はなかった。
 かといって楽しそうでもない。苦しそうでもない。ただただ無表情で無感情なのだ。

 ムラサキは口を開いて、すぐに閉じた。
 言いたい言葉がようやく見つかったのに、それをすぐに失ってしまったみたいに。



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