122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/05(月) 01:08:25.51 ID:wbDVTs5Go
少しして、ヤマトは立ち上がった。さっきまでとはうってかわってすっきりとした表情をしている。
彼はその顔を見て何も言えなくなった。ヤマトの背中にのしかかっていた重く冷たい氷が、今融けて消えてしまったのだ。
ヤマトは何かを思い悩んでいたのだと、彼は今更のように気付く。
そしてそれはたった今なくなってしまった。
それは良いことのはずだ。でも、なぜだろう。彼はとても不安に思う。
ヤマトはベンチから立ちあがると、こちらを振り返りもせず公園から去っていった。
好き放題に言い散らかしていなくなった。彼の話。なぜ今こんな話をしたのだろう。
彼は何を目指していたのだろう。
分かるのは、ヤマトのあの言葉は長い時間の中で培われたものだということだけだ。
これまでに経験したさまざまな出来事が溶け合い、彼の心に暗い渦をつくった。
その渦に、ふとした瞬間に飲み込まれそうになるのだ。必死になっても逃れられないことがあるのだ。
抵抗を諦めてしまえば楽になる。そう思ってやめてしまいたくなる。
でも、と彼は思う。それはしてはいけないことなのだ。
とにかく抗って、抗って、抗い続けなければならないものなのだ。
冬の公園のベンチに、ひとり取り残されていることに彼は気付く。
ひとりぼっちで、誰もいない、と彼は口の中で呟いた。
でもみんなそんなものだ。
とにかく立ち上がらないことには、どこに向かうべきかも見えてこない。
彼はひとつ溜息をついてから、ベンチから立ち上がった。
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