123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/05(月) 01:08:52.35 ID:wbDVTs5Go
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週末に、彼は仮免許試験を通った。多数の人間と行動を共にするのはひどく骨が折れることだった。
集団行動などというものはもう三年ととっていなかったのだから無理もない。
二段階の学科や教習の説明を受けたあと、彼は心地良い疲労感に身をあずけながら待合室の長椅子に腰をかけていた。
ヤマトの姿はあれ以来見ていない。不思議なことではない。そもそも今までがおかしかったのだ。
あんなに何度も知り合いに会うなんてことはなかなかない。とはいえ、冬休みに入ればそういった機会も増えるだろう。
ちょうど、学生は休みに入った頃のはずだ。彼は内心で安堵していた。
人が増える。それがおかしいことではなくなる。自分がその中に溶け込める。
やっぱり自分は日陰者なのだなとふと思う。それも悪くはないかもしれない。根源から変わろうとしなくてもいいのだ。
少しすると、待合室にムラサキが現れた。彼女は彼の姿を見つけて近付いてくる。
確認もせずに隣に座る。どうしてだろうと彼は思った。
彼はムラサキのことが好きだった。
ひょっとしたら、今でも好きかもしれない。
でもそれはどうすることもできない感情なのだ。
自分はもう学生ではなくて、何の経歴もなければ経験もない。
恋愛などというものに関われるような人種ではなくなってしまった。
だからこの感情をどうすることもできない。ムラサキだって相手にしないだろう。
そう考えて、彼は少し安心する。結局逃げたいだけかもしれないと感じる。それでもまぁ、言っていることは間違っていないだろう。
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