24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:20:03.91 ID:vDKXf2v5o
バイトを探し、電話をした。三度。季節は夏から秋へと映り、もう冬が近づいていた。
彼は以前として堂々巡りから抜け出せていなかった。連絡した店は、いずれも彼が働こうとするのを受け入れなかった。
身だしなみも整え、なるべく真摯な態度を取ったつもりだった。
星の巡りが悪いのか、あるいは彼が気付いていない原因でもあったのか。断られた原因は彼には分からない。
秋になると、母がどこか遠くに旅行に行こうと提案した。決まってからはすぐだった。予定の摺り合わせはすぐに行われ、翌週末に父の車で海に行った。
姉はひさびさの遠出で浮き足立っていた。母も父も同様だろう。いい気晴らしになるはずだ。
父や母や姉は、彼のことを気にかけてはいたものの、四六時中そればかりではない。職場にも人間関係はあるだろうし、それ以外の悩みだってあるだろう。
彼自身も、家族の前ではなるべく明るく振る舞うようにしていた。それが作用したのかは分からないが、道中はなごやかだった。
海沿いの通りにある駐車場に車を止めて、付近を歩く。通りに軒先を連ねた店は、食べ物屋や土産物屋が入っており、名産物を使った食べ物屋が特に多かった。
家族全員で歩道を歩きながら、店に入っては何かを食べる。あれは美味しかった、あれは口に合わない、そんな会話をしながら、家族たちは楽しそうだった。
彼もまた、最初はその行楽を楽しんでいた。けれど徐々に、その感情は薄れていき、やがてぽっかりと抜け落ちたように消えていった。
自分はなぜこんなところにいるのだろう。
自分はここで何をしているのだろう。
不意に生まれたその疑問に、彼はまた暗い思考が蠢くのを感じた。
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