27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:50:48.12 ID:vDKXf2v5o
学科、受講、教習券、予約、みきわめ、仮免許。それらの単語は、彼の心に暗い影を差した。わずらわしいシステムが、彼は何よりも苦手だからだ。
それでも、元来は真面目な性分だからか、彼はそれらを必死にこなした。平日は毎日空いていたので、あまり日数はかからない計算だった。
毎日の学科講習と、空いた時間に入れた教習。彼はマニュアル自動車の免許取得を目指した。
平日の昼間には、学生達はほとんどいない。夕方近くなると増え始めるが、その頃には彼は帰路についている。
人の居ない待合室の雰囲気は、彼の気性にはよく合った。
少女と出会ったのは、彼が半クラッチや断続クラッチと言った操作に頭を悩ませながら、なんとか問題なく教習のコマを進めていた数日目の夕方のことだった。
少女は、彼の中学時代の同級生だった。とはいえ言葉を交わしたことがなく、顔を見たことがある程度の中でしかない。
声をかけてきたのは少女の方だった。大勢の学生達が、仮免許試験やエンストや教官の態度の悪さなどを話している中で、彼女はひとりで本を読んでいた。
声をかけられた、といっても、何かを話したというわけではない。ただ「ひょっとして」と名前を言われ、自分が頷いただけのことだった。
彼女は自分と同い年の学生が大声で騒いでいるのに辟易していたようだった。本を読むのにも集中できずに、辺りを見回したときに彼に気付いたのだろう。
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