5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 17:18:54.72 ID:vDKXf2v5o
しばらくしてから、寝起きの口の中や髪が不快になり起き上がる。誰もいない家には、ただ安心だけが充満していた。
彼は太陽に照らされて明るくなった部屋を見渡す。いくつかの本棚にぎっしりと詰まった小説。パソコンデスク。
部屋の隅に置かれたギタースタンドと安いエレキギター。何もない部屋だと彼は思った。
「鍵」を外して部屋を出た。ベランダに繋がる南側の窓から太陽の光が差し込んでいるのを見て、彼は時刻が昼近いことを知った。
階段を下りてリビングに出ると、やはり誰もいなかった。当然と言えば当然のことだ。今、この家には自分しかいないのだから。
冷蔵庫の中には何も入っていなかった。彼は流しの食器入れのなかからマグカップを取り出し、インスタント粉末を入れてコーヒーを作った。
それを持って、また二階にある自室に戻る。彼はこの行為を一日のうちで何度も繰り返す。
彼は腹を空かせてもものをろくに口にしなかった。ときどき食パンを見つけて食べることはあっても、それ以外はほとんどない。
一日のほとんどで彼が口にするのはブラックのコーヒーのみである。だが彼は、ときにして一日で十数杯のコーヒーを呑むこともあった。
ときどき、どうして自分はこんなにもコーヒーを飲むのだろうと考えることもあった。そしてすぐに、どうでもいいことだと思考をとめる。
考え事に没頭していると、いつのまにか思いも寄らない方向に考えが及ぶことがある。彼は経験上それを知っていた。
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