6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 17:24:32.63 ID:vDKXf2v5o
部屋に戻ってからコーヒーをデスクの上に置く。パソコンの電源を入れずに、まだ呼んでいない小説を本棚から取り出した。
もっぱら、昼間の暇な時間を、彼は睡眠と読書に当てていた。インターネットは没頭しはじめると果てがなく、大抵の場合得るものがない。
その点小説ならば、と彼は考えたのだ。とはいえ、それによって生活の何かが変化したかと言えば、そういうわけでもないのだが。
読書をしながらコーヒーをすすり、マグカップの中身が尽きれば、またコーヒーを入れにリビングに降りる。
それを何度も繰り返して、彼は退屈な時間を誤魔化す。
こうして本を読んでいる時間が、彼の生活において一番満たされた時間だと言える。
本を一冊読み終えて、彼が達成感と余韻に浸る頃には、窓から差す日は赤く変わり、時刻は夕方近くなっている。
そうなれば、日没も夜も近くなる。それを思うと、彼はいつも憂鬱になった。両親や姉が帰ってくるたびに、いたたまれない気持ちにさせられるのだ。
もちろん、自分が悪いということは承知している。誰もせいでもなく、ただ自分が臆病だっただけなのだと気付いている。
そして、この生活から抜け出すかどうかも、自分の意志ひとつで変わる問題なのだと。
けれど、分かっていることは何の解決にもならない。なかば開き直りのような気持ちで引き籠もり続けるこの生活に、彼は疲れ始めていた。
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