196:1 ◆H0UG3c6kjA[saga]
2012/01/03(火) 00:05:36.61 ID:Tj4M2rQZ0
目が覚めると、シチューがテーブルに並べられ、スプーンが添えられていた。
既に席についている青ピは、のんびりとした(そんな風を装った)様子で俺を見ると微笑んだ。
前の職業柄、人の嘘を見抜くのは得意だった。何か考えを笑顔の下に巡らせながら、青ピは微笑んでいる。
それが分かったところで、何だというのか。
どうせあの日に死んでいた命だ、例えこのシチューに毒が潜んでいようとも、好きな奴に殺されるなら、むしろ本望だ。
最早能力以外価値の無いこんな人間を、それでもいいと、青ピは愛してくれた。
何度疑っても、傷つけても、青ピは俺を追い出さなかった。
過去の汚い話を打ち明けても、それでも構わないと笑って抱きしめてくれた。
もう、それだけでいい。殺されたって、何されたって、我慢する。出来る。
俺は愛するという事はよくわからないけど、青ピの事が大好きだと、今なら胸を張って言えるから。
だから、もう何をされても構わない。
垣根「寝てた、悪い。食うか」
青ピ「ええよ。いただきますー」
垣根「…いた、だきます」
湯気を立てる温かいシチューは、予想通りに美味かった。
只、鼻から抜ける薬独特の臭いに咽そうになる。
食事に毒やら薬やらを盛られるのは初めてじゃない、今すぐにでも胃液ごと吐き出せば良いのかもしれない。
でもそれをしたら青ピが傷つくような気がして、出来ない。
青ピにだって考えがあって薬を盛ったのだ、どんな効能かは把握しているだろう。
毒を口にする俺以上に辛そうな表情で食事をする青ピの姿を見て、知らず知らずの内に微笑んでいた。
馬鹿だな、今この瞬間まで俺が気が付いてなくてもそんな顔されたらわかっちまうぞ。
あるいは、わざとバラして指摘して欲しいのか。それは分からないが。
これで媚薬なんてオチならそれで良いのに、と思うものの、思考に霞がかったように頭が重いから、きっと違うだろう。
とてつもなく眠い。今の今までずっと徹夜しながら細かい作業をしていたかのように眠くて、視界がぼやけていく。
睡眠薬か、毒か。後者なら俺は此処で死ぬ。
ぶちまけて汚すと片付けが面倒だろう、スプーンを器に突っ込んでだるさに身を任せてカーペットに倒れる。
茶色い綺麗な天井を見上げていると、段々と瞼が意思とは関係無しに下がってくる。
視界に入り込んできたのは、何かを怖がる様な青ピの顔。泣くなよ、自分でやったんだろうが。
―――青ピ、だいすき。
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