過去ログ - 紬「メンヘラ」
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9: ◆3/LiqBy2CQ[sage]
2011/09/15(木) 20:05:47.57 ID:+wTNpPwyo


――りっちゃんの号令で解散し、家へと戻る。
ちなみに私の今の家はどちらの実家でもない一戸建てだ。新婚夫婦として、まぁ、いろいろする事もあるわけで、実家では色々と都合が悪い。幸いというか何と言うか、互いの家柄ゆえにいい土地の一戸建てを購入すること自体は容易だった。
……夫婦仲の冷め切った今では、つくづく実家暮らしでなくて良かったと思う。厳密には最初から私だけが冷めていて、彼はまだ私を諦めきれていないようなのだが、まあ些細なことだ。

紬「ただいまー……」

静かに鍵を回し、玄関扉を開いて小声で呼んでみるが返事はない。
その『私を諦めきれていない』彼も、さすがに明日の仕事に備えて寝たらしい。次期社長の椅子が約束されている彼は多忙だ。
一方の私は彼の補佐役として仕事場に足を運ぶことは多々あるが、それでも基本的には寿退社した扱いだ。休みを取ろうと思えばすぐに取れるし、主婦業に専念しろと言われることも多い。
実に都合のいい、自由な立場。今はまだそんな都合のいい立ち位置に甘えていよう。

……明日のデートに思いを馳せ、身体を清めてから私は床についた。



――翌日。彼に今日は仕事を休む旨を伝え、朝食を作り、昼食の愛妻弁当まで作り、掃除洗濯まで完璧に済ませ、私は家を出た。
完璧に、とは言うが正午は回っている。でも唯ちゃんもお昼は過ぎると言っていたので何も問題はない。

唯「お待たせー! ごめん、遅れた?」

紬「ううん、今来たところだから」

嘘でもそう言うのが待ち合わせの様式美。できれば一度くらい、友人ではなく恋人に言ってみたい台詞ではあるが。

紬「……汗かいてるね」

唯「うん、まだまだ暑いねぇ……」

と、そこで今日の唯ちゃんは長袖であることに気づく。そりゃ汗もかくだろうに、何故だろう。
とはいえ私も長袖であり、しかもそれに人には言い辛い理由もあるから尋ねづらかったが、意を決して口を開いてみる。

紬「……半袖のほうが涼しいのに」

唯「ん? あー……ムギちゃんだって長袖じゃん。昨日もだったし」

紬「う、うん……まぁ」

手首を隠そうと勝手に動く手を、理性で止める。
誰にも見られたくない躊躇い傷。けれど、不自然に隠そうとしてはいけない。相手が唯ちゃんでも、いや唯ちゃんだからこそ勘付かれる可能性はある。
あくまで自然に、堂々としていないと。

唯「でね、それで……えーっとね…」

歯切れの悪い唯ちゃん。勘付かれたわけではないと思うけど……

唯「その……ほら、お揃いだよ、ね。これで」

紬「……へ?」

唯「お揃い。長袖カップル。なんちゃって〜……ダメ?」

……なんて可愛い事を言ってくれるんだろう、唯ちゃんは。
本当に昔と変わらないね。私の好きだった頃の唯ちゃんのまま。

紬「……ふふっ……嬉しい。ありがと」

唯「うん。よかったぁ…」

紬「ふふ……」

そして更に、その「お揃い」という言葉は、私に一つのアイデアをもたらす。
今日のデートのお礼として、何かお揃いのアクセサリーでも買おう、と。特に行き場所も決めていなかったはずだし、今日はそれを目的にしてみよう、と。
でもまぁ、今はその前に……

紬「じゃあ唯ちゃん、行きましょうか。例の場所」

唯「おおっ、楽しみー! ムギちゃん行きつけの安くて美味しいお店!」

紬「ふふっ、私だっていろいろ勉強したんだから。どーんとお任せ!」

唯「おー!」




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