929:ブラジャーの人[saga]
2012/03/02(金) 23:21:57.28 ID:JnPct9QC0
「…あれほど、避妊には気をつけなさいと、言ったじゃないの」
芳川が言い終わると同時に、勢いよく立ち上がったせいで傾いだ椅子が倒れる。まさか、一番初めに芳川に引っ叩かれるとは。
殴られるなら、黄泉川にだと思っていた一方通行は驚いた。
「妹達で妊娠した個体はいないわ。私からも、まだ妊娠しないように、と注意している。その理由は君もよく知っているわよね?」
「…あァ」
ぱぁん。
今度は反対側の頬を張られた。
「桔梗……」
「ヨシカワ、やめて……」
友人と打ち止めの言葉は届いても、彼女は一方通行を見据えたままだ。
「君の作った研究所でやっていることは、いつか全ての妹達が、人としての、女性としての幸せを選択できるようにするためよね?」
「………」
黄泉川と打ち止めは、目を合わせて驚き合った。『研究所!?知ってた?』 『ううん、今初めて聞いた』と、口をパクパクさせたり、首を振ったりして意思を疎通させる。
(ミサカ達のための研究所…。そんなのいつの間に…)
「避妊は、してたが………。こうなっちまったからには、……覚悟決めるしかねェだろ」
「この人ばかりを叱らないで。ミサカだって同罪だよ」
打ち止めは、立って一方通行に寄り添う。本当に守るかのように、半ば背中に彼を隠して。
「罪なことなんてないじゃんよ。誤解すんな。おめでたいことじゃんか」
「ヨミカワ……」
「そうよ。悲しい顔しないで」
「だって、ヨシカワがあんまり怖いから、ってミサカはミサカは迫力に圧倒されていたと白状してみる」
少しだけ、いつもの雰囲気が戻ってきた。一方通行はそこでようやく、痛む頬に手を宛がうことができた。
この痛みを、芳川桔梗の想いの深さだと感じて、
「打ち止めも子供も、必ず無事に産ませてみせる」
「あたりまえよ。明日から忙しくなるわ……」
やっと芳川に笑みが浮かび、知らず力の入った肩をほぐした一方通行と打ち止めであった。
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