過去ログ - まどか「無限の中のひとつの奇跡」
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80: ◆oQV5.lSW.w[sage saga]
2011/10/13(木) 02:56:48.13 ID:oIK4Qu7A0
時計の針を見ながら、色々と思う。
私は、無力で、冷淡だ。
常に自分のことで手一杯で、誰かのことを構う余裕が持てない。
巴先輩のように、優しさで
暁美先輩のように、強さで
或いは美樹先輩のように、純粋さで
誰かの為に、何かを出来る
その力も、心も――私には無い。
夕方、佐倉杏子とトラブルがあったときも、私はただの傍観者でいることしか出来なかった。
さっきまでの会話も、敷島さんの話を聞き、心を支える役は、美樹先輩に丸投げだ。
私では、時々無機質な相槌を打つくらいしか出来なかった。
その敷島さんの話を、反芻してみる。
かつては誰の眼にも親友同士だった、美術部の部長と副部長は
美術展での予想外の低評価と、元はごく些細な意見の対立から
ついには部を二分して、互いに酷評し、泥仕合を繰り返す間柄になってしまった。
その煽りをもっとも食ったのが敷島さんらしい。
双方から裏切り者扱いされ、叩かれた挙句、部を追放された。
――感情的にはまだ不安定な敷島さんの言い分を纏めると、大体こうなる。
当事者でない者が、片方の言い分だけを聞いて、判断をすべきではないという正論。
私はそれに、縛られたふりをして、逃げる。
本当は、関わり合いになるのも、思い出すのも、嫌なだけなのに。
しかし美樹先輩は違う。相争う二人を断罪し、全面的に敷島さんの味方をする。
それは正しい判断ではないと、批判されても当然の行為だけど
その――若い子らしい純粋さは、確かに敷島さんの心を癒し、救っていた。
敷島さんをベッドに寝せ、髪や服を整えたときに、滑り落ちた生徒手帳。
拾い上げた私は、その中の写真をちらりと見てしまった。
凱旋門を背景画に、とても楽しそうに笑い合っていた、敷島さんと二人の友人。
何の確証も無いけれど、あの二人が話の中の二人なんだろうか。
崩壊は突然やってくる。昨日までの友人が、虐げる者へと変貌する。
それがいつでも起こり得ることを、私はよく知っている。
ああ、だけどせめて
――願わくば、私達の間には、不和の林檎が放り込まれませんように――
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