3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/10/08(土) 14:44:21.79 ID:BYPVPEQn0
【短編 一発ネタ エーベルージュ SS】二人の写真
エーベルージュ SS二人の写真
校門を出る時に、二人でトリフェルズ魔法学園の校舎を眺めていた。
長い時間だったような気もするし、短い時間だったような気もする。
そんな生活を送った校舎、校庭などの思い出の場所を名残惜しそうに見つめていた。
いずれ、切なさを覚え胸を痛めるであろう過去に変わる場所を。
そんな場所と時間には、もう二度と戻れないのを、俺は実感していた。
手に持っている卒業証書が、学校との決別を促しているような気がして少し憎らしくさえ思えた。
「いろいろ‥‥‥あったよね‥‥‥」
ノイシュが、校舎を見つめながら、小さくつぶやいた。
「そうだな‥‥いろいろあった‥‥」
俺も校舎を見ながら、そう答えた。
あの窓から、四季に変わる街を見下ろした事もある。
あの場所で、寝ころんで空を見上げた事もある。
その隣には、いつも一緒に居てくれた人がいた。
今横に居てくれる人がそうだ。
俺は横に居るノイシュを見た。
ノイシュはいつのまにか俺を見ていた。
目と目が合うその瞬間、言葉はいらなかった。
ノイシュは小さく笑った。
涙の跡が、俺にはとてもいとおしく感じられた。
「俺達さ‥‥‥‥」
「なに?」
「忘れないよな。ここを。ここでの事を」
「‥‥‥うん、忘れないよ。いつまでも」
再び、俺達は校舎を見つめた。
どちらからともなく、手を求め合い、握りあっていた。
雪の降る聖夜に、寒い手が温もりを求めようとした事もある。
熱かった夏の夜に、かすかに小指が触れ合って、ドキっとした事もある。
いつも俺達の手は遠かった。触れ合うほどに近くにあったのに。
だけど、今は違う‥‥
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