過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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11:ny[saga]
2011/10/19(水) 21:07:50.03 ID:oNEfTHUU0
奇しくも、現場に大神と共に居たマリア。
加え、大神よりも更にアイリスと長い付き合いのマリアなら、何か分かったかもしれない。
思い、大神は訊ねる。
マリアは何とも言えない顔つきで、静かに口にした。
「私も一部始終を見ていたわけではないので分かりませんが……、
確かに隊長のおっしゃる事は正しいように思います。
あのようなアイリスの姿は私も見た事がありません。
あれはアイリスではなく……、そう、まるで別人です」
そうなのだ。あの時のアイリスは確かに別人だった。
不意に紅蘭が寂しそうな、怯えているような、複雑な顔つきで言う。
「まさか、降魔や魔族の影響っちゅう事は……」
慌てて口を塞ぐ。あやめの事を思い出したのだろう。
無論、大神も、さくら、すみれ、マリア、カンナも忘れたわけではない。
突如、敵に回ってしまったあやめ。
今も忘れられない、辛い過去だ。
あやめと仲のよかった紅蘭が、それを危惧するのも当然だろう。
だが、大神はかぶりを振った。
そう。アイリスのあの変貌振りを見て、大神もあやめを思い出さなかったわけではないのだ。
降魔の可能性があるとい事も、仮定として考えていた。
だが、しかし……。
「大丈夫だ、紅蘭。
それはありえないはずだ。現在、降魔の活動は全く見られないじゃないか。
もしアイリスが何らかの魔の存在に操られるのなら、それは降魔の活動が相当に活発になった時だろう。
ただでさえ霊力の高いアイリスなんだ。
そんな事でも起こらない限り、魔の影響を受けるのは俺達の方が先さ」
そうなのだった。アイリスは飽くまでアイリスなのだ。
彼女ほどの霊力の持ち主が魔に支配されるほどの悪意が帝都を覆っているのだとしたら、
大神達どころか帝都の人間の八割が何らかの魔に侵食されているはずだ。
「せやったら……、一体何なんやろか」
それは大神にも分からなかった。
しばらく沈黙が続いたが、マリアがアイリスの顔を覗き込みながら、ぽつりと言った。
「ひとつだけ、心当たりがあります」
全員がマリアの表情を窺った。
彼女は無表情で、何も掴めなかった。
マリアは大きく息を吸って、声を絞り出した。
「私も確証があるわけではありませんが……、こういう事例を聞いた事があります。
隊長、『狐憑き』をご存知ですか?」
「狐? コーン、って鳴くあの狐かい?」
「そうです。古来、日本では狐憑きという、憑依現象が存在しました。
突然、普通の人物が、人が変わったように豹変する現象です。
暴れたり、性格が正反対になったり……。
古代の人々はそれを狐の霊が憑いて、人間の人格を豹変させていると考えました。
しかし、近代になってそれは……」
途端、マリアが言葉を止めた。
アイリスが眼を覚ましたのだ。
少々不安だったが、大神はアイリスに出来る限り優しく声を掛けた。
「アイリス、目が覚めたかい?」
アイリスは何故自分が眠っていたのか分からない素振りで、辺りを見回す。
「どうして、みんなここにいるの?」
大神は説明に困ったため、真実に触れるのを避けた。
「散歩してたら、いきなりアイリスが眠っちゃったんだよ」
少し無理のある説明だったかもしれない。事実でもあるが。
アイリスは多少疑問そうに顔を膨らませていたが、すぐに微笑み直して言った。
「そうなんだ。うーん。何でだろ? アイリス、はしゃぎすぎちゃったのかなぁ?」
「ははっ、そうかもしれないな」
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