過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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20:ny[saga]
2011/10/19(水) 21:14:27.69 ID:oNEfTHUU0
「ええ、必ず。紅蘭の科学力と私の霊力を使えば、必ず成功すると思います。
現在の状態では、アイリスの治療法は恐らくありません。
ならば、治療法を確立するまで、アイリスを仮死状態にするしか……」
「駄目だ!」
部屋が震えるほど、大神は叫んだ。
冷静なマリアの表情が驚きで固まるほどだった。
「何を言っているのか分かっているのか、マリア?
アイリスが俺たちと同じときを生きられなくなるんだぞっ!
そんな事を出来るはずがないだろうっ!」
アイリスは人一倍背伸びをしたがる子だ。大人になるのを誰よりも望んでいた。
そんなアイリスの時を止め、皆と違う時間を生きさせるなど、
理屈的には分かっていても、どうしても大神には出来なかった。
目覚めた時、その幼心に再び大きな傷を受けさせてしまうなど……、そんな事が出来るわけがない。
だが、マリアは譲らなかった。譲れないのだ、彼女も。
「私だって……! 私だってそんな事は分かっています!」
叫んで、震えていた。
そうだ。彼女は友人を失っているのだ。
きっとマリア自身が多重人格の恐ろしさを、誰よりも分かっているのだ。
「……すまない」
呟くように大神は謝る。
「いえ、私こそすみません、隊長。動揺してしまって……」
それから、二人は何も言わなかった。
眼前の強大な敵に絶望していた。
相手はもう一人のアイリス。
どうやって相手をしろというのだろうか……。
「もう一つだけ……」
「え?」
「もう一つだけ、可能性があります」
「ある……のか?」
「ええ。ですが、とても確率の低い可能性です。それでも、構いませんか?」
運命と戦わずしてアイリスを失うか、運命と戦って低い確率に賭けるか。
選ぶとしたら後者しかない。
全員帰還、だ。理想かもしれない。無理な理屈かもしれない。
だが、その理想を貫き通さずして、何が軍人だろう。何が隊長だろう。
理想だけで人は救えないのは分かっているが、理想を無くしては未来を創造する事は出来ない。
偉ぶって犠牲すら数字としてしか見られない隊長に、何の意味があるだろう。
だから、大神は言うのだ。賭けるのだ。
「当然だ。教えてくれ、マリア」
「分かりました。
隊長、ポルナレフに異変が起こった時の事を覚えていらっしゃいますか?」
「霊力が弱まった時の事かい?」
「そうです。彼は言っていたでしょう?
『アイリスか……? いや、違う……?
出てくんな! てめえはいっつも俺の邪魔ばかりしやがって!
今は俺だ! やめろ! 来るなっ!』と大体そんな感じの事を……」
大神は首肯する。
そうだ。大神が殺されそうになる寸前だった。
あの時はアイリスが助けてくれたのかとも思ったが、振り返るとどうも違うようにも思える。
マリアは続ける。
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