過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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3:ny[saga]
2011/10/17(月) 22:24:50.03 ID:kMGjv5NB0
「どうしたんだ? アイリス」

だが、アイリスは低く唸っているだけで何も答えない。
しかも、身体を痙攣させている。
さすがに心配になった大神はアイリスの頬を両側から挟み、彼女の大きな瞳と瞳を合わせる。
しかし、アイリスの瞳の焦点は合っていない。

「アイリス! 聞こえるかいっ?」

呼びかけるのに。必死で呼びかけるのにアイリスの反応はなかった。
だのに、アイリスの痙攣は治まることはないのだ。ひどくなる一方だ。

「アイリスっ! アイリスっ! 俺だよ!
俺がわかるかっ? しっかりしろっ!」

声の限り叫んだ。喉が枯れるほどに。見ていた子供が怯えるほどに。
すると、アイリスの痙攣が治まった。嘘のように、潮が引くように治まった。
ほっと大神が安心したのも束の間、今度は突然帝都を巨大な揺れが襲った。
巨大な、とても大きい地震だ。
アイリスを力強く抱きしめて、大神は必死に倒れないように地面を踏みしめる。
一体、何だというのだ。一体全体、これはどういうことなのだ。
大神に答えは出せない。だが、アイリスだけは守らねばならない。何としても。
帝都を悲鳴が奔る。そこらかしこで事故が起こっている。巨大地震に帝都は混乱する。

と。
突然、地震が止まっていないというのに、アイリスが大神を突き飛ばした。
子供の力のはずなのに、異常な筋力で大神はアイリスに突き飛ばされる。

「アイリス……?」

大神が地面に手を付いて伏せながら、動揺した口調で呟く。
アイリスは大神を見下ろしていた。
大神など知りもしない、赤の他人だという風に大神を冷たく見下ろしていた。
感情のない人形のようだった。冷たい視線で大神を見下していた。
見たこともないアイリスの冷たい表情に、大神は息を呑む。
瞬間。
アイリスが晴れやかな笑顔に変わった。開閉器を切り替えたかのように、一瞬だった。
だが、その笑顔は普段のアイリスの笑顔ではなかった。
黒い、真っ黒い、残虐性のみを発露させたような漆黒の嗤い。
そして、声こそアイリスと同じではあったが、声質が異質な嗤い声が響く。

「はははははは…ハ、あハハはハは…あはははハははははハ!」

例えるなら、降魔、魔族の嘲笑。
人間の憎悪を糧にして存在する存在の嘲り。
もしかしたら、このとき大神は初めて心の底から恐怖したかもしれない。
自分より一回り近く年下の少女に、大神は恐怖したのだ。どうしようもなく。
ジャンポールを投げ捨て、アイリスは飛んだ。浮いたのだ。自らの能力で。
こんなことはありえないはずだった。アイリスが飛ぶことなどまさか。
加え、ジャンポールを投げ捨てるなど、そんなことがあるはずがない。
まさしく、アイリスはアイリスであってアイリスではなかった。
大神の知るアイリスを超越していた。
間違いなく、彼女は大神の知るアイリスではないのだ。


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