過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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37:ny[saga]
2011/10/21(金) 19:24:51.81 ID:sT9PuPCN0
○
激痛が大神の身体を支配していた。
身体中が悲鳴を上げている。
だが、痛みを感じられる程度なら大した事はないはずだ。
どうにか、大神は立ち上がる。
痛いが、動けないほどではない。
しかし、これはどういうことだ?
あの霊力は確実に人間の致死量を超えていたはずだ。
手を抜いたのか?
だが、それが違うことはすぐに分かった。
目の前で、信じがたい光景が広がっていたのだ。
「………………っ?」
否、特に変わってはいなかった。
花組は全員無事だ。『ポルナレフ』も健在。違っているのは……。
空を飛ぶ一つの物体。
自分など相手にならない霊力を身にまとう存在。
そして、大神はそれに見覚えがあった。
「ジャンポール……っ?」
ジャンポール。
そう、『アイリス』の一番の親友、ジャンポールだ。
どういう事なのか、大神は一瞬現実を受け入れられなかった。
ただのぬいぐるみのはずのジャンポール、それが何故……?
瞬間、大神は『アイリス』の言葉を思い出した。
いつもジャンポールがたすけてくれるんだよ、という『アイリス』の言葉。
夢でなく、真にジャンポールが助けてくれていたと言うのか?
『ポルナレフ』は動揺しているようで、眼を剥いてジャンポールを睨みつけていた。
「てめえっ! てめえは『アイリス』と一緒に消えたはずっ!
また邪魔すんのかっ? どうしていつも俺の邪魔ばかりしやがるんだ、ちくしょおっ!」
『ポルナレフ』は絶叫する。ジャンポールはただ浮いている。
唐突に。
大神の脳裏に声が届いた。そして、それは花組全員も同じようだった。
『言ったよ。僕はアイリスを護るって』
ジャンポールの声だ。
『アイリス』がジャンポールと話すとき、ジャンポールの声真似をしていたときの声だ。
そうなのだ。と大神は思った。
アイリスを真に守る者。
簡単な事ではないか。ジャンポールだ。ジャンポールしかいない。
何て事はない。『ポルナレフ』の言う『てめえ』とは、『ジャンポール』だったのだ。
分かり切っていた事ではあったが、確証が無いから確信は持てなかった。
だが、もう間違いはない。
幼い頃から傍にいたアイリスの親友。
彼女を救い続けてきた英雄、『ジャンポール』。
きっと、ジャンポールその物は、ただのぬいぐるみなのだろう。
しかし、『イリス』が孤独に耐え切れず『ポルナレフ』を作り出したように、
『アイリス』はもっと違う方法で、もっと違う考え方で、
自分を救ってくれる親友、英雄を無意識のうちに作り出したのだ。
自分の辛い記憶を押し付ける対象ではなく、彼女らしく無邪気に、
ただ友達が欲しい一心で、その友人像をジャンポールに投影する事で。
そう。きっとそれこそが、アイリスを護る人格『ジャンポール』だ。
そうして生まれたのが、『アイリス』を護るぬいぐるみ、ジャンポール。
ぬいぐるみに別人格が宿るのも、彼女のテレパス能力があってすればのことに相違ない。
思えば『アイリス』はジャンポールが居ない時は、精神的に不安定な事が多々あった。
『ジャンポール』が傍に居るという事が、彼女の精神を保たせていたのだ。
いつも、護っていてくれたんだな、ジャンポール……。
その大神の思念が通じたのか、瞬間、ジャンポールの背中が嬉しそうに見えた。
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