過去ログ - 和「行き過ぎて後に」
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5: ◆qwglOGQwIk[sage saga]
2011/10/20(木) 14:44:20.72 ID:nB24EvoIo



「しばらく、こういうのはやめよう」と、私から切り出した。

初めて出会った時、彼女――唯は、私の服を右手で摘んでいた。
その摘んだ指をそっとほどいてあげるのは、利き手を預けてもらった私の役目だ。

「うん」と、意外にも素直に唯は答えた。
その瞬間に吹いた風は、独り善がりな予想を外した私を嘲笑うかのように、色を持たないまま胸の中を吹き抜ける。

吹きぬけた風が茎を揺らし、心に棘が触れるけど。
そう、この棘が届かないほど高い場所に、綺麗な花を咲かせないといけない。

意外にも、心の花は唯のほうが立派に育てていたようだ。


「やくそく」

「え?」

唯が両手の小指を差し出し、指切りを誘う。

「こっちのゆびは」右手を掲げて「ちゃんとおむかえに行くってやくそく」。
「こっちのゆびは」左手も掲げて「そのときまでまってる、ってやくそく」。

それじゃどっちが行ってどっちが待つのかわからない、と尋ねたら、どっちもだよ、と答えた。
それは、私の服を摘んでついてきていた彼女が、私と並び立てるようになりたい、という決意の表れ。

それを拒む理由なんてないから、あと一回だけ、と「あいしてる」と言うと。
「わたしも」と、何よりも明確な輪郭を持った言葉が届いて。言葉の後ろに、未来の光が見え隠れして。

そして――





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