32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/10/22(土) 00:58:03.66 ID:9yuxyDT00
律が鏡を“アイツ”の前に掲げようとした刹那、古びた包帯で覆われた腕が首元に伸びてきた。
律「なっ…!?」
律は咄嗟に体を捻ってそれを避けようとする。
が、時は既に遅かった。
律は恐怖心が故に、冷静な判断ができないままでいた。
それ故、相手から仕掛けてくる可能性というものを失念していた。
やるかやられるかのこの状況において、『やられる』場面を想定していなかった弊害は大きい。
焦りにより無鉄砲に飛び出してしまった挙句、相手の行動への反応が一瞬遅れてしまった。
腐食した腕が律の喉元をとらえる。
乱雑に巻かれた包帯の隙間からは、焼けただれた皮膚が覗いている。
律(……!)
沸騰したのか、と錯覚するほどに律は顔が熱くなるのを感じた。
息を吸うことができず、体が痙攣する。
律は気力を振り絞り、痙攣する腕を上げた。
鏡が“アイツ”の顔を捉える。
……が、何も起こらない。
何故だ。コイツは自分の顔を見れば消えるのではなかったのか。
苦しみと絶望が律の頭を支配した。
…目の前が真っ白になった。
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