121:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 23:02:17.53 ID:CGXDMCHp0
「圭介、それは違うよ」
汀は淡々とそう言った。
「助けない方がいいよ、この人」
また近くの蝶々を一つ掴んで、握りつぶす。
<うるさい! うるさい! 僕は殺すんだ! あの女を……僕を笑った女を! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!>
『どうして?』
圭介に聞かれ、汀は答えた。
「だって、屑は死んでも治らないもの」
『…………』
圭介はしばらく考え込んでいた。
が、断固とした口調で彼は言った。
『治せ』
汀は、また一つ蝶々を握りつぶした。
<誰も僕を分かってくれない、誰も僕を分かろうとしない。誰も彼もが僕を見下すんだ。僕は……僕は……>
そこで、突然木々の間に蜘蛛の巣が出現した。
蝶々達が、次々と網にかかっていく。
<僕は……僕は……僕は……>
<殺してやる! 殺してやるんだみんな!>
<血……ひき肉……>
<興奮する。絶叫を聞くと>
<僕を拒絶する声を聞くと、僕は生きている実感を得ることが出来るんだ>
<だから鳴いてよ。もっと、もっと鳴いて>
<誰か僕を分かってよ! 僕はここにいるよ!>
<どうして誰も分かってくれないんだ! 父さんも、母さんも……>
<僕は……! 僕は!>
<僕は、誰だ?>
最後の呟きは、ぐわんぐわんと丘に反響して消えた。
蝶々達は、動きを止めていた。
おびただしい数の蜘蛛が、カサカサと動いて蝶々達を食べ始める。
蜘蛛も、紙で出来ていた。
178Res/185.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。