122:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 23:07:05.39 ID:CGXDMCHp0
「この人は自壊を選択してる。生きてても、自分のことが何だか分からなくなってるよ」
『でも、治すんだ』
「どうして?」
『……俺達が、医者だからだ』
「医者?」
『医者は人を治す。それが、人を救うということだ。お前は目の前のことしか見ていない』
「…………」
『汀』
圭介は、彼女の名前を呼んで、優しく言った。
『人を、救いたいんだろう?』
「…………」
『沢山の人を、お前の手で救ってやりたいんだろう?』
「…………」
『目の前だ。そのチャンスを、お前の手で掴め。それは、お前の「踏み台」だ。それ以上でも、それ以下でもない』
「私……私は……」
「なぎさちゃん!」
そこで、うずくまっていた岬が大声を上げた。
ハッとした汀の足元に、紙の蜘蛛の大群が迫ってきていた。
岬が這って逃げようとしている。
小白は、汀の肩の上で、シャーッ! と毛を立ててうなった。
「貴方達が欲しいのは、これ?」
汀がニコリと笑って、蜘蛛達の前に、閉じていた右手を開いた。
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