132:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/23(日) 18:11:32.22 ID:VvTHD4vM0
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「負担をかけすぎだ……」
数日後、自室のベッドの上で呼吸器を取り付けられ、意識混濁状態になって眠っている汀を見て、大河内が苦そうに口を開く。
あの直後、汀は意識を失い、まだ目を覚まさない。
大河内は圭介に向き直って、彼をにらみつけた。
「いい加減にしろよ、高畑。この子は人間なんだぞ。お前の『治療』は、この子に負担をかけすぎている」
「だが、結果的に中島は一命を取り留めた」
資料をめくり、壁に寄りかかりながら口を開く。
大河内は一瞬黙ったが、また苦そうに言った。
「秋山さんは訴訟を起こすつもりらしい」
「へぇ」
「中島は命は取り留めたが、自分が何をしたのか、何者なのか、全ての記憶を失っていた。そんな人間を断罪したところで、意味はないとさ」
「いいことじゃないか。元々この国は死刑廃止論者が多いんだ。この機会に、死刑について考える人が多くなれば、法治国家としてのレベルアップが図れる」
「ふざけている場合じゃない」
「ふざけてなんていないさ。俺はいたって真面目だよ」
圭介はそう言って、資料を閉じた。
「レベル6の患者の治療に成功した例は、日本では初だ。これで、俺達は更に高みを目指せる。元老院も満足だろう」
「お前はそうやって、結果結果と……」
「だが、それが全てだ」
淡々と圭介はそう言った。
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