14:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:05:24.48 ID:CGXDMCHp0
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その「患者」が現れたのは、それから三日後の午前中のことだった。
夏の暑い中だというのに長袖を着た、女子高生と思われる女の子と、その母親だった。
圭介は、座ったまま何も話そうとしない女の子と、青ざめた顔をしている母親を交互に見ると、部屋の隅の冷蔵庫から麦茶を取り出して、紙コップに注いだ。
そして二人の前に置く。
「どうぞ。外は暑かったでしょう?」
女の子に反応はない。
何より彼女の両手首には、縄が巻きつけられ、がっちりと手錠のように動きを拘束していた。
女の子の目に生気はなく、うつろな視線を宙に漂わせている。
圭介はしばらく少女の事を見ると、彼女の頬を包み込むように持って、そして目の下を指で押した。
反応はない。
「娘は……」
母親は麦茶には見向きもせずに、青白い顔で圭介にすがりつくように口を開いた。
「先生、娘は治るんでしょうか?」
「自殺病の第五段階まで進んでいますね。きわめて難しいと思います」
柔和な表情を崩さずに、彼はなんでもないことのようにサラリと言った。
母親は絶句すると、口元に手を当てて、そして大粒の涙をこぼし始めた。
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