164:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/29(土) 01:20:33.10 ID:veqilnkN0
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汀は目を開いた。
彼女は、いや、「彼女達」は一面真っ白な空間に立っていた。
汀が少し離れたところに立っていて、他のマインドスイーパー達が固まってきょろきょろと周囲を見回している。
そこは、一面が白い珊瑚の砂浜のようになっていた。
足元には柔らかい砂地。
そして真っ白な空が広がっている。
水音。
そして、クラシックの優しい音楽がかすかに聴こえる。
汀は、米粒のような砂を、しゃがんで手ですくうと、サラサラと下に落とした。
風はない。
完全に無風だ。
しかし温かい。
足に擦り寄ってニャーと鳴いた小白を抱き上げて肩に乗せ、汀はヘッドセットのスイッチを入れた。
他のマインドスイーパー達も、同じような動作をしている。
「ダイブ完了。周りの状況を確認したよ」
『どうだ?』
圭介に問いかけられ、汀はマイクの向こうの保護者に、肩をすくめてみせた。
「ただの、自然構築された無修正の白空間。本当に自殺病を発症してるの? ってくらい平和」
『そうか。中枢は……探すまでもないだろうな』
「うん」
汀は、先の空間に目をやった。
そこには丸い、一掴みほどの玉が浮いていた。
顔の位置にあるそれは、多少濁ってはいるが、ほぼ透明で、水晶のようだ。
中に、黒い墨のような紋様が浮いていて、それが形を変えつつ、徐々に広がってきている。
汀はその前に立って、少し考え込んだ。
「訂正。ちょっと難しいかも」
『どういうことだ?』
「中枢が剥き出しで置いてあるのは乳幼児によくあることだから、問題はないんだけど……中枢の内部まで、ウイルスが入り込んでるね」
『取り除けるか?』
「駄目元でやってみる」
そう言って玉に手を伸ばしかけた汀に、追いついたマインドスイーパーの一人が声をかけた。
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