166:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/29(土) 01:24:54.55 ID:veqilnkN0
「あ……あなたが、もっと上手く治療できるなら、その方がいいですけれど……考えてる風だったので……」
「精神中核を触れるの?」
「はい。私、そのためにこのダイブに参加しました」
理緒が、花のような笑顔で笑う。
顔の前で指を組んで、彼女は玉に近づいた。
「綺麗な核。やっぱり、赤ちゃんの精神は凄く安定してて、強いなぁ」
「中核を無傷に素手で触れるスイーパーなんて、聞いたことないわ」
「触れます。ほら」
そう言って、理緒は手を伸ばし、汀が制止しようとする間もなく、丸い玉を両手で包み込んだ。
そして、つぷり、と音を立てて指を中に入れる。
どうやら鉱石質なのは外観だけらしく、ゼリー状らしい。
そのまま理緒は
「うん、うん……怖くないからね。大丈夫だよー」
と、子供に言い聞かせるように呟きながら、目を閉じた。
そして黒い筋を指でつまみ、するっ、と抵抗もなく引き抜く。
時間にして十秒もかからなかっただろうか。
「ほら、心配ない」
くるりと振り返って、理緒はニコリと微笑んだ。
彼女が手につまんでいた、黒いウナギのような筋が、塵になって消えていく。
「……驚いた。精神中核の奥に食い込んでたウイルスを、核を傷つけずに、素手で除去するなんて……」
汀が、思わずと言った具合で呟く。
それに、マイクの向こうで圭介が答えた。
『その子は、赤十字が保有している数少ないA級能力者の一人だ。治療には成功したのか?』
「私が来る意味あったの?」
『……特に問題がないようだったら、戻って来い。深追いする必要はない』
「どういうこと?」
それに、圭介が答えかけた時だった。
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