2:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/21(金) 23:56:03.05 ID:Rcy++Q4I0
巨大な「目」の下に、彼女は立っていた。
目を取り囲むのは、無数の目。
蠢く肉質な壁、壁、ピンク色のそれは建物や地面を覆っている。
ぶよぶよした浮腫のようなものがまとわりついているのだ。
そして、そこに埋め込まれているのは眼球。
血走った目がぎょろぎょろ動き、彼女のことを数千、数万も凝視している。
空は黒い。
どこまでも黒い。
その真上に、空全体を覆い隠すほどの眼球が、まるで太陽のように浮き上がり、あたりを照らしていた。
常軌を逸した空間。
普通でははかりえないような、そんな空間に、彼女は平然と立っていた。
年の頃は十三、四ほどだろうか。
長い白髪を、背中の中心辺りで三つ編みにしている。
可愛らしい顔立ちをしているが、その表情は無機的で、何を考えているのか分からないところがあった。
彼女は、眼前にぽっかりと空いた「穴」の前に進んだ。
穴は、肉の床が崩れ、内部に人間の体内に似たものが見える。丁度食道を内視鏡で見るかのような感覚だ。
奥は曲がりくねって深く、よく分からない。
彼女は耳元に手をやった。
右耳の部分に、イヤホンつきの小型マイクがはまっている。
そのスイッチを動かして、彼女は口を開いた。
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