29:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:17:15.57 ID:CGXDMCHp0
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気づいた時、汀はマネキン人形が所狭しと、果てしなく投棄された、その山のような場所にうつぶせに倒れていた。
映画館のマネキン人形と同じように、全て同じ髪型をしている。
それらは腕をもがれたり、顔面を破壊されたり、全てがどこかしらを欠損していた。
共通しているのは、顔には「男」と書かれていること。
空には穴が開き、そこが汀が穴を開けた映画館のスクリーンらしく、ザワザワという騒ぎ声と笑い声が聞こえる。
少しして、汀は果てしなく広がる遺棄された人形達を踏みしめて、立ち上がった。
一箇所だけ、スポットライトが当たったように明るくなっている。
そこに、全裸の女の子が、何かを抱きしめるようにして膝まずいていた。
女の子の全身には、青黒い切り傷がついていて、そこから血がにじんでいる。
人形達を掻き分け、汀は女の子に近づいた。
そして、その頬を掴んで自分の方を向かせる。
やはり顔面はなかった。
そこには「嘘」と書いてある。
「全てを嘘にして逃げたいの?」
そう言って、汀はにっこりと笑った。
「全てを壊して、そうやって底辺で這い蹲っていたいの?」
女の子の反応はなかった。
汀は少しだけ沈黙すると、さびしそうに一言、言った。
「それが、一番楽なのかもしれないんだよ」
答えはない。
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