31:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:18:54.20 ID:CGXDMCHp0
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診察室で硬直している母親を尻目に、圭介は黙々とカルテに何事かを書き込んでいた。
「お話の意味が……分からなかったんですが……」
母親がかすれた声で言う。
「ですから、堕胎しました」
圭介は顔を上げることなく、淡々とそう言った。
「今現在、娘さんは赤十字病院の大河内先生のところで入院しています。詳しいお話は、彼からお聞きください」
「娘は……妊娠していたと言うんですか?」
「はい。正確に言うと、妊娠の極々初期だったと考えられます」
「どういうことですか!」
母親が絶叫した。
圭介は立ち上がった彼女に座るように促し、柔和な表情のまま、続けた。
「この事実は、もう娘さんの頭の中から消え去っています。それを掘り起こすのは、そちらの勝手ですが、私はあまりオススメはしませんね」
「…………」
「自殺病の再発が考えられますから」
カルテに文字を書きながら、彼は続けた。
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