42:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:53:52.97 ID:CGXDMCHp0
2.血の雨が降る景色
「今日はこれ以上は無理だ。汀ちゃんを家に帰してやれ」
そう言われ、圭介はしばらく考え込んだ後、苛立ったように部屋の中を歩き回り、ぴたりと足を止めた。
「患者の家族は何て言ってる?」
「相変わらず知らず存ぜずだよ」
「そうか……」
圭介の肩を叩いて、彼と同様に白衣を着た男性……大河内裕也が続けた。
「この患者に入れ込むのは分かるが、少しは汀ちゃんのことも考えてやったらどうだ。肩の力を抜け」
「お前に言われなくても、それは分かってるよ」
柔和な顔立ちをした圭介とは違い、大河内は髭をもみ上げからアゴまで生やした、熊のようないでたちをしていた。
そこで、ガラスで覆われた部屋の向こう側……真っ白い壁と床、そして薄暗い蛍光灯の光に照らされた施術室の中で、車椅子の汀が、もぞもぞと動きにくそうに体を揺らすのが見えた。
圭介はため息をついて、彼女の方に足を向けながら呟いた。
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