53:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:18:23.64 ID:CGXDMCHp0
圭介は少し沈黙してから、言った。
「嫌だね。一度依頼された治療は必ず行う。それが俺の方針だよ」
「汀ちゃんを見ろ。負担がかかりすぎてる。この患者の治療をするには、十三歳では難しすぎると私は思うがね」
「でも、汀は特A級だ」
「天才であることは認めるよ。しかし、適材適所という考え方もある。これは、赤十字の担当に回したほうがいい」
「大河内」
彼の言葉を遮り、圭介は言った。
「汀にとって、お前は『お父さん』であり、『恋人』であるかもしれないけど、お前にとって、汀は『娘』でも『恋人』でもないぞ。俺も同じだ。入れ込みすぎているのはどっちだ?」
問いかけられ、大河内が口をつぐむ。
圭介は資料を彼から受け取り、テーブルの上に戻した。
「治すさ。汀は」
「…………」
「たとえそれが、家族から見放された、重度の『痴呆症』の患者であっても」
「痴呆症の患者は、精神構造が普通の人間とは違う。汀ちゃんに、それを理解させるのは無理だ」
「無理でもやるんだよ」
いつになく強固な声で、圭介は言った。
「それが、あの子の仕事だ」
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