59:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:23:57.94 ID:CGXDMCHp0
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汀は、古い日本家屋の中に立っていた。
床に、立っていた。
「うわっ!」
小さく叫び声を上げ、汀は真下に落下した。
ドタン、と受身を取ることも出来ずに、体をしたたかに打ちつけ、彼女はしばらくうずくまって、痛みに耐えていた。
『どうした?』
圭介の声がヘッドセットから聞こえる。
汀は息をついて、腰をさすりながら起き上がった。
「ちょっと失敗しただけ。何でもない」
そこは、上下が逆になった世界だった。
床が天井の位置にある。
反対に、天井が床の位置にある。
しかし、家具や電灯は、重力に逆らって上方向に固定されていた。
汀だけが、家屋の中、その天井に立っている。
先ほどは床の位置から落下したのだ。
息をついて周りを見回す。
タンスに、大きなブラウン管型テレビ。
足元の電球の周りには虫が飛んでいる。
障子は開いていたが、その向こう側は真っ白な霧に覆われていた。
そこは居間らしく、頭上にテーブルと座布団が見える。
奇妙な光景だった。
今にも家具が天井に向けて『落ちて』きそうな感覚に、汀は少し首をすぼめた。
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